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「ま、たしかになぁ。評判が悪い、だったら直しようもあるんだろうけれど……」
「評判自体がないもの」
「むぅ……やっぱり、抹茶とチョコのハーモニーは別格ですねぇ」
学校帰り、アイス屋。ここは店内でも食べていけるので、アリスと倫子、そこに男子生徒を追加して三人は、各々アイスを食べながら話し合っていた。
「先輩達みたいにはできないもんだねぇ」
「おいおい、弱気になるなよ編集長。別に先輩らのと比べて、そんなに酷いってこともねぇし」
「はぅ……ラムレーズン。ラムレーズンも食べようかなぁ♪」
「……」
「……」
隣でアイスに夢中な可愛い後輩はほっとくとして。アリスは半分溶けかけたバニラをカップからスプーンですくって口に運び、目の前の男子に目をやる。
「ま、丁度夏休みだし、じっくりやろうや。な?」
そう言ってコーンにかじり付く彼に、アリスは頷いてみせた。
中村悠太。なかむらゆうた。新聞部副部長でアリスのクラスメイトで……まぁ、その、メールとか電話とかきたら、嬉しくなる人というか。
ちょっとボサボサの短い髪の、まぁ普通の男の子だ。
「……夏休みで時間が使えるなら、取材旅行とかどうですか?」
いつの間にか席を立っていた倫子が、アイスののったカップを片手に戻ってきてそう言った。
「まぁ、合宿って名目ならそれもアリだけど……こないだデジカメ買ったから、そこまで予算ないよ」
「……でも、アリス先輩バイトしてるでしょう?」
「え、アタシの自腹? てか、みぃちゃん。当たり前みたいな顔で言わないでよ」
「え、違うのか?」
「よーし、部長張り切っちゃうぞー……って馬鹿! だったら悠太も出しなさいよ!」
「何でアリス先輩、ツッコミだけ上手くなってくんですか」
だけ、は余計だよ。アリスは明らかに原因であろう、笑う二人を見てため息をついた。
「ま、旅行はともかく、取材は近場でもできるしな」
「まぁ、日帰り範囲でも色々あるし……例えば?」
アイスを食べきってつぶやく悠太に、尋ねる。すると悠太は嬉しそうにニヤリと笑って。
「ばっか、夏っていったら、ユーレイ。ユーレイったら、心霊スポットに決まってんだろ?」
とんでもないことを言いやがったのだ。
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