表の顔、裏の顔

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「…お願いします」 「ん?何か言った?聞こえない」    柏木は空とぼけた顔で、首をかしげた。絶対聞こえてるくせにっ。   でも、仕事をしてもらう為にはやらなきゃならない。  「お願いしますっ!」  ガバッと頭を下げて、大きな声で言った。  「はい、よく出来ました」  柏木はにっこり無駄に爽やかな笑みを浮かべて、私の頭を撫でた。な、撫でるな〰!!ちょっとドキドキしちゃったじゃない。  「それにしても、色気も何もねぇお願いだったが、まぁいい。今日は仕事してやる」  柏木はさりげなく毒づきフンと鼻を鳴らす。色気もないとか余計なお世話だ。 「秘書に色気は必要ないと思いますが」  私はわざと、社長のデスクにバンッと書類を叩きつけると 「お茶いれてまいりますっ!」  と、柏木にくるりと背を向ける。後ろから柏木がクスクス笑う声が聞こえたが知らぬ振りをして、社長室を出た。
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