421人が本棚に入れています
本棚に追加
「…お願いします」
「ん?何か言った?聞こえない」
柏木は空とぼけた顔で、首をかしげた。絶対聞こえてるくせにっ。
でも、仕事をしてもらう為にはやらなきゃならない。
「お願いしますっ!」
ガバッと頭を下げて、大きな声で言った。
「はい、よく出来ました」
柏木はにっこり無駄に爽やかな笑みを浮かべて、私の頭を撫でた。な、撫でるな〰!!ちょっとドキドキしちゃったじゃない。
「それにしても、色気も何もねぇお願いだったが、まぁいい。今日は仕事してやる」
柏木はさりげなく毒づきフンと鼻を鳴らす。色気もないとか余計なお世話だ。
「秘書に色気は必要ないと思いますが」
私はわざと、社長のデスクにバンッと書類を叩きつけると
「お茶いれてまいりますっ!」
と、柏木にくるりと背を向ける。後ろから柏木がクスクス笑う声が聞こえたが知らぬ振りをして、社長室を出た。
最初のコメントを投稿しよう!