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???「君、ギロだよね?」
ギロ「え?おねいちゃんもおれのこと知ってるの?…おれってもしかして有名人?」
???「うん、かなり。ボクは燐火、高等部に通ってる。で、こっちがラビス。よろしくね」
ギロ「よろしく!燐火おねいちゃんとラビスちゃん!!」
燐火「ところで、その両手に抱えてるのって…」
燐火はギロが華奢な両腕をフル活用して持っているものに目を落とす。ギロは燐火のその様子を見て、なぜか自慢げに笑った。
ギロ「アリシアおねいちゃんにもらったの!!」
燐火「やっぱりそうなんだ」
ギロ「やっぱりって?」
燐火「アリシアちゃん、よくお菓子配ってるから…」
ギロ「そうなんだ…ふぅん……おれだけ特別ってわけじゃないんだ………」
燐火「何すねてるの?」
ギロ「すねてないもん」
燐火「すねてたでしょ?」
ギロ「すねてない!」
燐火「…そ。じゃあすねてないってことで。」
不毛なやり取りが終わり、沈黙が訪れる。
凶悪な人食いのくせに案外お子ちゃまなんだな、などと燐火が考えていると、同じく考え事をしているふうだったギロはいいことを思いついたといった表情で話しかけてきた。
ギロ「ねぇねぇ燐火おねいちゃん!」
燐火「何?」
ギロ「燐火おねいちゃんもこの学園にいるってことは何か特別な能力を持ってるんでしょう?」
燐火「まぁ…うん?それがどうかしたの」
ギロ「あのね、この飴ちゃん一個おすそ分けしてあげるから…」
燐火「あげるから?」
ギロ「ほっぺ舐めさせて!!」
ギロのその一言で、それでなくても凍り付いていたカフェテリア内の空気がさらに温度を下げる。
逃げ出そうとしていた生徒も完全にタイミングを逃し、ただ事の成り行きを見守っていることしかできない。
長い長い一瞬が過ぎ、燐火はさもこともなげに口を開いた。
燐火「……………いいよ?」
その返事を聞くや否や、ギロは瞳を輝かせながら「ほんと!!?」と言って立ち上がった。
ギロ「じゃあはい、飴ちゃん。で、燐火おねいちゃんの気が変わらないうちに………」
…そのときのカフェテリア内の様子は、とても言葉で言い表せるものではなかった。
後日、ギロが行く先々でこのことを自慢して回ったという事実は容易に想像できるとは思う。
曰く「やっぱり能力者は深みもとろみも全然違う!」だそうだ。
完。
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