32人が本棚に入れています
本棚に追加
あおいが私のフリをして、ちづるIDを使ってたこと…今のちづるIDが、もう妹のあおいではなく、私本人であることなどの事情、その全てを知っているひと。
更に、それらが周りにバレないように、全面協力してくれている。
本当に、いつもありがとう…艶姫。
『あ…電車きた!』
携帯チャット継続のまま、各駅電車に乗る。
鞄を上の棚に押し込み、シートに座って脚を組んだ。
えっと…左脚を右脚の上に、交差するように重ねる、って感じかな。
各駅だと、目的の駅までの乗車時間38分。
だけど、チャットをしているとあっという間だ。
私が降りる駅に着いたから、と挨拶をしてチャットを退室。
南上條駅からマンションまでは、徒歩で12分くらい。
『あおい。ただいま』
玄関の扉を開けてくれたあおいに、私は優しく言った。
『お帰りっ♪お姉ちゃんっ♪お疲れさまっ♪今夜は《鶏団子ときのこのパスタ》作ってみたの』
『あぁ…本当だぁ。パスタのいい匂い…私もうダメ。お腹ペコペコで倒れそう…』
ダメなのは、料理音痴の私だ。
抜群の《天然記念物レベル》の料理音痴…情けない…あぁ。
和弘さんは和食の板前さんだけど…和洋中、料理なら何でも得意…って凄い。
レシピさえあれば、その和弘さんの料理を完璧に再現できる妹…あおいもまた凄い。
《おばかッ!》っていうところだけ目を瞑(つむ)れば…あおいは私の自慢の妹だ。
さぁて…私の部屋のベッドに鞄をドサッと下ろし、ひと呼吸…いざダイニングへ。
ひまわり柄のテーブルクロスの上にはイチゴやキウイやマンゴーの《フルーツサラダ》。そして鶏団子ときのこのパスタ。
この繊細で色彩豊かな盛付けは、やっぱり女の子だぁ。
『はぁー…ご馳走さま…』
『どぉ?お姉ちゃん。鶏団子ときのこのパスタ、美味しかったかなぁ…?』
『うん!そりゃもう、物凄く美味しかったよ。最っ高!』
『えへへっ♪…良かったぁ♪』
こんな時の妹の笑顔は一番可愛く見える。
そういえば…今日は妹とのある約束の日だった…忘れてた。
『あおい。あおいの《恋庭》の会員ID作っていいって約束の日…今日だったよね?あとで一緒に作ろっか』
『うん…だけどお姉ちゃん、今日は疲れてそうだし…また今度でいいよぉ』
『あら…そう?ごめんね。気を遣ってくれてありがとうね。あおい』
しかし…隠し事はすぐにバレる…。
最初のコメントを投稿しよう!