あおいと仔猫と会員ID

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会員IDの、あの件から数日が過ぎて…。 ある晩…あおいと一緒に、私のパソコンで《こにログ》を見てたときのこと。 とあるタイトルが、私達の目に留まった。 《中堅ハッチ》というハンドルネームの男性会員の投稿ブログ…【貰ってください】 …貰ってください? 『ねぇあおい、このブログ…ちょっと見てみよっか』 『うん!気になる!』 そのタイトルに釣られてブログを開いた。 その内容を縮訳すると…。 ‐‐お父様の病気が悪化し、長期入院…お父様の経営していた小さなペットショップが経営困難に…。 他の大手ペットショップ会社に手配するなど努力したが、僅かながらペットが残ってしまった…。 取りに来て頂ける方に限り、無料でペットをお譲りします…‐‐ 『お姉ちゃん、見てこれー!…きゃーっ♪超ぉ可愛ぃー♪』 『ほんとだ。可愛い仔犬ね』 本文中にある、自動画像表示されているいくつかの仔犬、仔猫の写真。 そのひとつ…可愛い仔猫の写真に、また私達の目は留まった。その下に説明。 【生後2ヶ月…オス。品種:短足猫…マンチカン。毛柄:長毛・全白色…】 『ピンクのお鼻、可愛いすぎー♪…この仔猫ちゃん、普通に買ったら24万円もするの!?それがタダなのぉ!?凄ぉーぃ!!』 …ちらりと、あおいの横顔を見た…。 このキラキラ輝いた瞳…満面の笑顔…このテンション…非常に危険だ。 中堅ハッチさんの指定する、元ペットショップのある場所は四国地方…遠いから、まさかとは思うけど…。 ここは釘を刺しておかないと…。 『えぇと、香川県かぁ。さすがに遠いし…ここのマンションがペット禁止じゃなかったらこの仔猫、飼ってあげられたかもしれないのにね。残念だね…』 急に不機嫌そうな表情に変わったあおいが、無言で私の部屋を出ていく…やれやれ。 あおいは子供の頃から《拾い犬》《拾い猫》をすることが得意だった…。 それから4日後…土曜日の朝8時過ぎ。 妹の部屋から聞こえる、小さな騒音に私は目が覚めた。 私はぼーっとしながらベッドから立ち上がり、カーテンを開け…『ま、眩しい…』の一言。 そしてふらふらと鏡台の前に座り、背伸びをして…『髪、ボサボサぁ…』と、また一言。 …ん? あおいが自分の部屋を出てドアを閉め、廊下を歩く音がした。 私も廊下に顔を出す。 『あおい、おはよう。出掛けるの?』 『ひぃっ!!』
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