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自分の部屋に急ぐあおい。さて…と。私は立ち上がった。
そおっと…あおいの後ろ姿を見る…。
あおいが自分の部屋のドアを開けたとき…その部屋の中から何かが勢いよく飛び出した…!?
『ぁ…ダメっ!!』
その小さな《真白い綿玉》は、慌て滑りながら廊下を豪快に元気に駆け回り…ダイニングを同じく走り回り…そして私の足元で止まった。
見つめ合う、私と綿玉…。
私は両手の平に十分収まる小さな綿玉を、ゆっくりと抱き上げる。
『んにゃ!んにゃあ!』
『ご、ごめんなさい…お姉ちゃん…』
…何この短い手足…ふわふわ柔らかい毛…真ん丸の大きな両目…可愛い…。
『ごめんなさい…ってさ、返しに行くにも遠いんだし、もう飼うしかないじゃないの』
胸に抱くと《短足綿玉仔猫》は、安心したように目を閉じ、寝息を立て始めた…。
この仔猫も長旅だったんだし…疲れてたんだろうな…。
そのままこの子をあおいに渡し、胸に抱かせた。
『…あおい。あんたが貰ってきたんだから、責任持って最後まで世話してあげなさいよね』
『うん。ごめんなさぃ…お姉ちゃん。ありがとう…』
次の日の朝から《目覚まし時計の助力》は不要となった。
廊下を駆け回る騒音…そして、あおいの潜めた声…?
「ちょーっと…ちょっと!…やめて。だーめ!…ダメったら!こんな朝早くから暴れないで!」
…ん?何?…つか今、何時?
《任務遂行前の目覚まし時計》を確認…えぇ?まだ5時26分なの?早いよぉ…。
あの綿玉仔猫は、あおいの制止を聞かずチャカチャカと、引っ掻く爪音を立てながら、廊下を滑り…今も元気いっぱいに走り回っている。
「だーからやめてってば!お姉ちゃんが寝てるんだから!起きちゃうでしょ!…おもち!止まりなさい!お願い…私の言うこと聞いて!…んもぉ」
えっ?…おもち?…仔猫の名前?白いから?
あおいらしい、凄いセンスだわ。くくっ。
…結局、中堅ハッチさんの投稿ブログ【皆さん、ありがとうございました!】は、すっかり見ないまま済んでしまった…。
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