私・望月ちづる 妹・望月あおい

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『…ありがとう。よいしょっと…』 私は運転手さんにお金を払ってタクシーを降りた。そしてタクシーが走り去るのを見届けることもなく、すぐに目の前のマンションの中へと入る。 ちなみにマンションは12階建て。 入ればすぐそこがエントランスホール。今日は宅配便の届く予定はなかったから、宅配用の届け箱は確認しないでそのままスルー。 すぐに左手に見えるエレベーターの扉の前へと向かう。 『…こんばんは』 『あ、佐藤さん。こんばんは』 エレベーターのすぐ左隣が管理人室。その大きな一枚ガラス窓越しに、エントランスホールの中が佐藤さんにはばっちり見えている。 ちなみに、佐藤さんは63歳のおじさん。雇用人だ。マンションのオーナーさんではない。 エレベーターのボタンを押すと…おー。今夜は降りてくるのが早かった。 すぐにエレベーターの中へと入り、そして7階を押す。 現在の時刻、20時14分。しばらく帰りは22時を過ぎていたが、今日は残業が少なくて済み、今に至る。 毎日これぐらい早く帰ってこれたらなぁ…。嬉しいんだけど。 私は10歳離れた(望月あおい)と二人暮らし。あおいは今年、大学生になったばかり。田舎の実家を出て、私のマンションに転がり込んできたのだ。 会社を出る前に、今夜は早く帰れることを妹にはもう連絡してある。今夜はどんな料理を作ってくれてるかなぁ。 料理音痴の私には、妹の存在が凄く助かる。 エレベーターが7階に止まり、扉が開いた。私はすぐに我が家の玄関の前へと急ぐ。 そして到着して玄関扉の横の、インターホンを押すと妹の声。 「ちづるお姉ちゃん?」 『そうよ。あおい、ただいま』 「はぁーい♪じゃあ今、玄関のカギすぐに開けるねー♪」 『うん。お願いね』 玄関の扉が開くと、そこには《ひまわりの黄色いエプロン》姿の妹が立っていた。 『お帰りー♪お疲れさまー♪』 今日もまた可愛らしい、にこにこ笑顔の妹のあおい。 『今夜は特別にー、お姉ちゃんの好きな料理、いーっぱい作ったんだよん♪』 『…本当?』 確かに…玄関まで漂ってくる、この美味しそうな香りは…。 無意識に鞄を玄関に手放すと、慌てて靴を脱ぎ…私の体はまるで何かに取り憑かれたように、体が勝手にダイニングルームへ…。 …もうお腹ペコペコ。 ダイニングルームの机の上には、私の好きな料理がびっしりと並び、置かれていた。
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