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『…それで?いくら請求がきたの?』
その言葉に、あおいが大きく反応する。
『違うの!請求とかじゃないよ!つまり…その…んと、えと…あっ!そうだ!』
急にダイニングを走り出ていき、しばらくして自分のスマホを握り、あおいはまたダイニングに駆け戻ってきた。
『これ。このサイト…《恋庭》』
えっ…恋庭?なんで日本語表記なの?
変な名前の出会い系サイト…。
普通、出会い系サイトって言ったら…詳しくはよく知らないけど…《〇〇メール》とか《〇〇ラブ》とか…カタカナ表記なイメージだったんだけど。
『お姉ちゃん…んでね、女性会員は完全無料だし、危ない出会い系サイトとは違うよ』
『本当?どうかしらね…』
そう言いながら、あおいのスマホを覗いてみる…。
小さな画面のなかに、アクセスした出会い系サイト《恋庭》の色々なコンテンツが、びっしりと並んでいる。
『これが…私の使ってる、問題のプロフィール…』
『はーぁ!?あんた…これ私じゃないの!!』
『ひぃぃ…ごめんなさぃ…』
名前も実名のちづる…出身県と在住県…生年月日…血液型…体型…趣味や性格に至るまで、全て私そのものだ。
『あのぉ…写真も…』
あおいとこの前行った、近くのデパート内で撮ったプリクラが、加工なくそのままプロフィールに載せてある。
『んもぅ…あおいのおばかッ!!』
『ひぃぃぃぃ…』
『なんでもっと可愛く写ってる別の写真、使ってくれなかったのよ!2年前に一緒に行ったスノボの時の写メとか…あれ私、可愛く写ってたでしょ!』
『ひぃぃ…えっ?あっ、ちょっと待って!お姉ちゃん!』
『えっ!?…突然どうしたの!?』
あおいのスマホが、メール受信したらしい。
『お姉ちゃん!和弘から《こにメ》…みんな今度のオフ会のことでチャットに集まってるからって。今すぐ来てって!』
聞いたことない専門用語らしき言葉が、あおいからどんどん出てくる。
『…和弘…って?』
あおいはその和弘という男性会員のプロフィールを見せてくれた。私より2つ年上の30歳。写真は料理とバイク…彼の素顔は分からなかった。
『和弘は高級和食料亭の板前さんなの。顔も凄いイケメンで、女性会員から超モテらしいよ。《こにログ》で、色んな料理レシピの投稿をしてるの。ほら』
『えっ?…料理レシピの投稿…?』
私はあおいからスマホを取り上げた。彼の《こにログ》投稿を確認する…。
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