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…やっぱり。あおいの《料理の先生》は彼だ。
『そ…それよりお姉ちゃん、チャットだよぉ!早くチャットに行って!』
『待って…どうすればいいの?指示して』
あおいの指示に従い、《恋庭》内のチャットのコンテンツへ。
和弘さんのいるチャットルームには既に…男性会員が他に2名、女性会員が1名いた。
男性会員…夏の空の鷹匠、HAKU、和弘。女性会員…魔女っ娘まおちん…。
『お姉ちゃん早く!チャットに入ってってばぁ!』
『えっ?ぁ…うん』
『入ったらまず挨拶だよ。お姉ちゃん』
私の初めてのチャット体験…入室者の発言がそれぞれ、交互に交わされながら並んでいる。
―――
HAKU >おつー。>ちづる
―――
夏の空の鷹匠 >ちづるキター!
―――
和弘 >こんばんは。急に呼び出してごめん>ちづる
―――
魔女っ娘まおちん >ちづる~ぅ♪この前はありがとね~♪ご飯食べた?
―――
挨拶?どうすればいいの?ここは何をすればいいの?…あっ!
『お姉ちゃん、チャットしたことないんでしょ?私に任せて』
今度はあおいにスマホを奪われた。
―――
ちづる >みんなこんばんはーwそういえば、お料理が目の前にあるのに、まだ手を付けてないおww
―――
へぇ…なるほど。ここに書き込みをして発言すればいいんだぁ。というか本当にお腹ペコペコ…。
あおいの美味しい手料理を、2人ともぱくっと口へと運びながら…もちろん、ちゃんと箸を使って…1つのスマホの小さな画面を、顔をくっ付けてひしめき合いながら、お互い譲らず覗いている。
変な姉妹…他人様には絶対見せられない姿だ…。
―――
和弘 >この前教えた、揚げ白身魚のオクラ入りあんかけ作った?妹さん美味しいって言ってた?>ちづる
―――
HAKU >今度のオフ会、ちづるの妹も参加したいって言ってたよね?非会員だけど18歳越えてるし、幹事がOKだって>ちづる
―――
ちづる >うん!妹美味しいって。大好評だったおw>和弘
―――
白身魚のあんかけ?それは昨日の夕食の料理だ。
あおいはこのサイトのおかげで、和弘さんと知り合い、料理が上達し、私も助かってる。出会い系サイトを、なんでもかんでも悪いだなんて言えないのかな…えっ!?
『あおい!ちょっと待った!!…このHAKUって人の書き込みは何!?妹がオフ会に行きたいっての!…んもぅ…このおばかッ!!』
『ひょえぇぇぇ…』
ふぅ…危うく見逃すところだった。
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