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「そんな金にがめついからツッキーたんが遠慮しちゃうんだりょ~。全く、小学生なんかに気を使わせちゃってんすよ」
「槻乃が、なんだって?」
槻乃紅里(つきのあかり)の名前が唐突に出たのですから、これには続けられていた愚痴も止めて中羽は希に尋ねました。
それを受け、キョトンとしながら、
「知らないにょ? めっずらしいぬ~、中羽ちんが私達の事で知らぬ存ぜぬぅ事があったなんつぇ」
「そんな驚きとか良いから答えろ。槻乃がどうしたって?」
「いやですね、はい。あまりにも中羽ちんが金払えって言うもんだから、ツッキーたんは家計の火車っぷりを察して昼食を抜いてるんすよー。オヨヨ、お腹を空かしても家に帰らず公園にいるツッキーたんときたら、なんと健気な幼女っすねぇ」
まるで嘘丸出しの冗談のように語る希の言葉でしたが、中羽の脳裏には幾つもの思い当たる節がありました。
なにせここ最近朝から遊びに出かけては夕方まで帰って来ず、昼食は友達の家でご馳走になったとか。また夏バテで食欲が無いから要らないと言ったり、寝むっていたりして食べ損なってしまう事もありました。
それが全て槻乃の遠慮心から来た行動だと言うのなら、なんて酷な事をしているのかと中羽は思います。齢8歳くらいの人間にしたら食べ盛り、育ち盛りの体であると言うのに、一食抜く苦痛はそう耐え切れるものではありません。
「あいつ……ったく、小学生は小学生らしく迷惑でも世話でも掛けやがれってのに」
「てな訳で、グチグチ言ってる中羽ちんが全面的に悪いってこって。これ以降はがめついたら駄目なんすよ~」
「小学生が空気読んで遠慮してるってのに、タダ飯食らっている高校生には言われたくない忠告だな。
だがまぁ、監督不届きであった事は認めてやる。忠告代として本日の昼食はタダにしてやらぁ」
人差し指を向けながらキメ顔で希にそう言った中羽は、槻乃を探しに行こうと言うのか台所から外に出ようとしていましたが、
「にゃら、加点をお願いするっさ~」
どや顔をしながら希がそう言うのですから、踏み出そうとしていた足は止まって中羽は希の方を再度向きました。
希の憎たらしい顔の横で中羽へと向けられたものは、送信を終えたメールの内容を表示する携帯の画面です。
宛先:地味子
件名:お腹空かせたロリ誘拐して来て
本文:
あ、ツッキーたんの事だから警察沙汰はしちゃ駄目っす
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