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何とも阿呆丸出しの内容でしょうか。画面を見せられた中羽もこれには思わずジト目になる程でした。
暫くは言葉を失って眺めているだけでしたが、呆れながら希にこう言います。
「何から突っ込んで良いのか困るメールだな。これは酷いとしかリアクションが取れねーぞ」
「むむぅ、乙女の文に対してこれは酷いとか失礼極まりないっす」
「いや、マジで酷い以外は何も言えん。件名も内容もそうだが、一番酷いのはどう考えても宛先の名だ。お前実はアイツの事嫌いなのか?」
アイツと呼ばれたのは仔数重千三子(こかぞえちさこ)という女の子の事です。
希とは同じ学校に通う間柄であり、中羽にしたら先輩後輩としての良き友達かと思っていたら、影では千三子のコンプレックスを堂々とアドレス帳に付けやがっているのです。
槻乃の昼食抜きの件を知らなかったのもあり、自分の知らぬ所ではもしやと2人の仲を疑ってしまったのでしょう。ですがそんなのは、
「いやっすねぇ、千三ちゃんとはバリカタ仲良いに決まってるじゃないっすか。中羽ちん十八番芸の早とちり早とちり」
「早とちりを十八番芸にしたつもりはねぇんだが。それにバリカタって、なんで麺の硬さを表す言葉が出てきたんだ。2人の絆の固さでも表してやがんのか?」
「え……あ、うん。そうだね。……中羽ちん言ってて寒くないっすか?」
「急に冷めた反応するなよ、余計恥ずかしくなるだろうが」
希に引かれたリアクションをされた為、羞恥心から赤面している中羽。これならいっそ笑い飛ばされた方がマシであっただろう。
激しく動悸する心臓を落ち着かせる為、冷蔵庫から飲み物を取り出して中羽は椅子に座った。少し引いていた希はその間、黙々と焼きうどんを食べていく。
何となしにお互いが絡み辛い空気の中、この雰囲気をぶち壊してくれる存在が現れないかと期待を寄せながら、ただただ沈黙が場を支配していたら。
下の方から扉が開く音が聞こえ、願っていた来客は来ました。
「言われた通り連れて来たよ束芽ちゃん」
そう言って入ってきたのは、見た目がパッとしないどころか特徴がないのが特徴とでも言うような、言ってしまえば地味な女の子です。
そして、その地味な女の子に抱えられながら「ふに……捕まってしまいましたのん……」と肩をガックリ落としている、赤髪で耳付きフードを深々まで被った小学生の女の子も台所へ入ります。
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