日常、「まぁ多分、貴方が一番の半端者でしょうけどね」

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彼女達が誰なのかは言わずもがな、千三子と紅里の両名です。 「おぉ、千三ちゃんナイス働っきぃ~。この私に貢献してくれてさんくしぃっす」 「束芽ちゃん、言葉遣いはもう少し正しく使おうよ。意味はきちんと伝わるんだけどメッだよ」 「相変わらずこまいっすね」なんて、舌を出しながらやなこったと千三子に希は返しました。「もう、細かいとかそんな問題じゃなくって」と、千三子の注意は継続して行きます。 そんな2人を眺めながら、中羽は対象的だなと改めて思っていました。 片方は、ジャージを着た活発系運動少女で、元気と明るさしか取り柄がない阿呆な少女であり、口調は軽くて変な言葉を多用するけれど、それでも友達付き合いは割かしら多い奴。 片や千三子は、女の子らしく大人びたおとなしめのレース服を着ており、上は薄灰色で下は紺のロングスカート。背中まで髪を伸ばしてはいますが透き通るような薄水色で目立たず、外見から言ってしまえば静的な印象です。友達付き合いとか希以外で聞いた事は無いけれど、清く心優しい少女です。 ここまで反対ならば、誰しも対象的だなと感心してしまうでしょう。 「ほら、言葉は清く正しく」と注意する千三子に対し、「キヨク、タダシクー」なんて茶化す希。千三子の気苦労は絶えません。 2人の友達漫才をこのまま眺めていようかと思った中羽ですが、千三子に抱えられていた紅里が手から抜け出して、ソロリソロリと外へ出ようとする姿に気付きまして、 「槻乃、ちょっとこっちに来い」 手招きしながら小声で逃亡者に呼びかけると、ギクリと相手は静止します。ぎこちなく振り返った紅狸の目の先には、一見満面の笑みを浮かべている中羽の姿がありますが、あれは心底怒っている時の顔だと紅里は知っていました。 でも、このまま逃げると後が怖い事も分かっていて、恐怖でひきつりながらも恐る恐る中羽の目の前にやってきて、 「小学生が遠慮なんかしてんな」 「ひゃう……っ」 額を襲った痛みで思わず悲鳴を出す紅里。 幼女に向かって容赦ないデコピンが炸裂しました。ガツンと痛そうな音は、涙目になった紅里が証明しているように小学生にとって鈍痛の域です。 膝を折り曲げてうずくまり、ひたすら額をさする紅里に中羽は更にこう言うのです。
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