日常、「まぁ多分、貴方が一番の半端者でしょうけどね」

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昨日までは騒音の1つに数えられていたセミの声が泣き静まり、夏休み中旬の夏のど真ん中であるというのに、本日はいつもより涼しく過ごしやすい日でした。 日課にされた町内打ち水の効果なのか、はたまた突然の異常気象なのかは分かりません。快晴だというのにいきなり7度近くも気温差があれば、世間が不安に煽がれるのも仕方ありません。 ただ、小さなオフィスビルに住まう在情中羽(ざいじょうなかは)は、そんな不安に駆られる事もなく「今日は過ごしやすくて良い日だな」と呑気な事を口にするのでした。 まぁ、クーラーをガンガンに付けた部屋でパソコンの前に座る少年が何を言っているんだという話なのですが、悪い方の夏休みの謳歌の仕方をしている彼でも涼しい方が喜ばしいのです。なにせ、こんな暑い中部活動に勤しむ知り合いが居るもので、無意識に言葉を零してしまったに違いありません。 そんな思いに耽(ふけ)りながら、在情中羽は机の上の冷めたコーヒーを口に運びます。喉を鳴らしながら飲む液体では無いのですが、朝からパソコン詰めだった疲れを彼にとって一気に飲み下したかったのでしょう。 まるで年季の入ったサラリーマンの様な中羽の面構えは、短い茶髪で中庸な容姿の彼なのですけれど実に様になっています。割烹着の上に着ていた白衣と相まって高校生には見えず、くたびれ切った大人の雰囲気は実に絵になっていました。 座っている椅子の背もたれに全体重を掛け、小休止とばかりに中羽は休憩を取ろうとしていたのですが、 「ぬぅ、おい在情! 私(わらわ)の朝食が無いとは何事たるや」 静寂を切り裂くようにキッチンから響いたのは、聞くからに幼き女の子の怒号でした。 居間にいた中羽は椅子から立ち上がらずに180度椅子事回転して、やれやれといった顔で振り返りながら声の主の方を見て言います。 「いきなり大声を出すなよリリィ。そんなビックリはしてなかったけどお前の大声って結構心臓に悪いんだぞ」 「ならばいっそこじらせて心肺停止しておけ。それより、それよりもじゃ、私(わらわ)は腹が減っておるのだというのに朝食が用意されて無いとは何事なのだ!」 8畳くらいはあるキッチンスペースの中央に置かれた角机を、バシバシ叩きながらリリィは空腹を訴えていました。 サラッと遠回しに死ねと言われた中羽なのですが、これくらいの暴言はいつもの事なので受け流していました。
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