日常、「まぁ多分、貴方が一番の半端者でしょうけどね」

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ごく最近、目の前の奴に告げた言葉であり、それがこんな形で自分を苦しめるなんて中羽は思いもしなかったでしょう。 そんな言葉を言ってしまった手前、中羽が説得を諦めかけていましたら、 「ま、そちもいい加減限界のようじゃし、今朝は諦めて素直に自炊にいそし――――」 折れたのは珍しくも向こう側でした。これ以上の駄々を止めまして素直に従おうとしていましたけれど、冷蔵庫を開けていたリリィの手が止まります。 なにせ、あれ程自分で作れだの俺はやらないだのと言っていたというのに、冷蔵庫の中には手間暇掛かってそうなフルーツサンドやフレンチトースト等がありました。量にして一人前くらいの、誰かの為の朝ご飯みたいなものがです。 それを見て最初は面を喰らっていましたが、直ぐ様状況を把握したリリィは。 「ほほぅ、これが世に聞くツンデレというやつじゃのう」 やらないだの言っていたくせに実はもう作ってあるとか、恐らくぶつくさ文句を垂れながらそれでも自分の為に作ったのだろう、これをツンデレと言わずして何と言うのか。等とリリィは思ったのです。 一方、中羽の方はそっぽを向いています。 説得し、分からせ、きちんと当番を守るよう言わしめてから明かしてやろうとしたのに、こう突然バレてしまえば恥ずかしさ極まりない。 赤らめた顔を隠す中羽をニヤニヤ見つめるリリィは、腰に両手を当てながら提案するように言い放つ。 「そちの計らいに心打たれた、よろしい今夜はラーメンを作ってやる。無論ニンニク増し増しの大盤振る舞いでのう」 「大盤振る舞うならせめてチャーシュー増やせよ。つか、それ先週も食ったぞ」 「なに、私の好物を振る舞ってやろうと言うのに何たる言(げん)じゃ。これはもう決定事項だ変えぬぞ」 ハイハイ、と今夜のメニューを諦めてパソコンに戻る中羽。リリィは自分の朝飯を片手に、嬉しそうな顔を浮かべて2階へと持って上がっていった。 そんな姿を目で追いながら、中羽は1つ気がつく。 「そういや、朝は起きれねぇくせにラーメンは大丈夫なのかねぇ」 体質的に。という意味の疑問であった。
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