第八話【影が薄い男】

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「おい、日向。何ボーッとしてんだよ。早く帰ろうぜ」 放課後、校庭で部活動をしている運動部の奴らの影を見ていた僕に、友人の木下が声をかけてきた。 「なあ、今日の事なんだけど」 木下が照れながら言ってくる。 「今日?何の事だっけ?」 「おい、忘れるなよ。合コンだよ、合コン」 浮かれる木下に僕は冷ややかな視線を送った。 高一が合コンって……木下は、四つ上の兄貴から聞かされた合コンでの、あんなことやこんなことに興奮し、自らもやりたいと言い出した。 そして、ままごとみたいな合コンが開かれる事になった。 プランを聞くと、ファストフードでメシ食って、カラオケ行って……って、いつもの学校帰りのコースと殆ど変わらなかった。 ただ一つ違うのは、いつもは同じ学校の奴らと行くところが、今回は、木下の知り合いと行くという事だ。 どこでどう知り合ったのか、近くの女子校の生徒数人と約束をしているらしい。 その点には木下、感謝する。 「どうする?お前も一旦家に帰るか?」 木下はどうしても服を着替えたいらしい。形から入るタイプ、その名も木下。 「僕はいいよ。時間も無いし。お前が着替えてくるまで、公園でブラブラしてるよ」 「えー?俺だけ着替えんの?参ったな。何か俺だけ目立っちゃわねぇ?どうしよう女子全員、俺に惚れたら」 幸せな奴だ。
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