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『だって、お母さんと離れたくないもん』
そう言うとブレスレットを抱きしめながら、大声で泣き出し、その場にへたり込んだ。
その言葉をきっかけに、34番の女性も、『私も……買います』と言った。
ニヤリと笑った霊能力者は、『そうですか。では、奥で詳しいお話を』と言った後、付き人に目で合図を出していた。
二人は付き人に促され、スタジオセットの裏へと消えていった。
友人はというと、私を説得し続けている。
『絶対買った方がいいよ。だって死んじゃうかもしれないないんだよ。この人の占いは絶対に当たるんだよ』
私は、『そうなんだ』と、まるで他人ごとのように友人の話を聞いていた。
霊能力者は私に対し、『ブレスレットを身に付ける事で問題は解決されます。あなたの場合は、間近に迫った死を回避する事ができます』
駄目押しの一言を言った。どうしても買わせたいらしい。さっきまで死ぬなんてことは本人からは一言も言ってなかったのに。
霊能力者は、優しく微笑んでいる。でも私を見つめる目は鋭く、笑ってなんかいなかった。
結局、友人はブレスレットを買い、私は買わなかった。
生放送の番組は思わぬハプニング(私のせいだと思うが)で、進行はめちゃくちゃだったけど異様な盛り上がりを見せていた。
そして霊能力者は、捨て台詞のように私に向かって一言言って、スタジオを去った。
『あなたの命はあと3日だと視えました』
さっきは何も視えないって言ってたくせに、今度は余命3日だなんて。
ますます、霊能力者の言葉が安っぽく思えた。
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