第一話【選ばれた女】

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━━運命に負けるな━━ だの ━━生きろ。神はあなたを見捨てたりはしない━━ だの…… 私は決して死のうだとか、まして、死にたいなんて思ったことはない。 ただ、この前、ほんの軽い気持ちで観覧しに行った番組で、勝手に『命のカウントダウン』を告げられただけだった。 それがたまたま全国放送の人気生放送番組だったことが私に運が無かったんだ。今では全国が私の余命を知っている。 当の本人がまったく気にしていない……信じていないのに、何故か周りが必要以上に盛り上がっている。 そんな状態が2日続き、落ち着いて眠れないどころか、私は全く外に出られない状態だった。 気分を落ち着けるために、インスタントコーヒーにお湯を注ぐ。 スプーンで軽く回すと、湯気と一緒に昇ってくるほのかな香ばしい香りが、ほんのわずかだったけど気分を和らげくてた。 そう言えば今日が霊能力者に言われた3日目だな、ってふと思った。 信じていないはいないけど、全然気にしていないわけではない。 抜いていたテレビや電話などのコンセントを入れる。途端に鳴る電話。私は気にせず、テレビを点ける。 そこに映された映像はとんでもないものだった。 映像は、私の住むアパートが上空から映されていた。画面の左上には「LIVE」の文字。 私は締め切っていたカーテンの隙間から、空を見上げる。 何台ものヘリコプターが上空で待機していた。 どおりで外がうるさかった訳だ。 私は再びテレビに視線を戻し、チャンネルを変えてみた。 どの局も私の「死」、つまり霊能力者の予言についての番組をやっていた。 ある局では、【霊能力者○○に死を宣告された女性、最期の一日】と題して、ご丁寧に緊急番組までやっていた。
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