第八話【影が薄い男】

2/15
343人が本棚に入れています
本棚に追加
/146ページ
『影』をずっと見ていると気持ち悪くなってくる。 だって、真っ黒い人型のものが、自分と同じ動作を、常にし続けてるんだから。 僕は『影』を『人』と接するように扱ってしまう事がある。そうなってしまったのには、小学校時代に原因があった。 昔、よく遊んだ遊び。『影踏み』によって。 その日も僕は影を踏まれないように必死で逃げる。でも結局すぐに踏まれてしまった。 踏まれても文句一つ言わない影。その影を見ながら、どうして僕と同じ動きしかできないんだろうと思った。 僕より素早く動ければ、踏まれずにすむのに……って。 そう思って影を見た時、僕は気づいてしまった。 自分の影が、さっき踏まれた所から血を流しているのを…… あれは、見間違いだった。 6年経った今では、そう思えるようになった。でもあの出来事から、影の存在が気になりだしたのは事実だ。 影を見ていると気持ち悪くなってくる。 まるで、真っ黒なもう一人の自分が、ずっと見張っているような気がして……
/146ページ

最初のコメントを投稿しよう!