343人が本棚に入れています
本棚に追加
そこには、「私の親友」と呼ばれる見ず知らずの女性がゲスト出演していて、私が過ごしてきた過去とは全く違う、身に覚えのない私との思い出を涙ながらに話していた。
また、ある番組では、私の「母」と名乗る他人が、『ブレスレットさえ、あの時つけておけば、こんなことには……』と語っていた。
私の両親は、数年前に他界している。一体この人は誰なんだろう。
私の知らない所で、私の知らない事が次々と起きている。
また、チャンネルを変えてみる。
すると、私のアパートの前で、リポーターが中継していた。背後には、しっかりと私の部屋の窓が映っている。
リポーターは言う。
『いまだ部屋にはしっかりとカーテンが閉まったままです。中の様子を伺うことはできません。彼女は一体、この時間をどのような想いで過ごしているのでしょうか』
陽が落ちかけて、電気も点けてない部屋は薄暗かった。テレビが発する淡い光だけが私を照らしていた。
その時だった。
『頑張れ』
『負けるな』
私に対して……私の命に対して応援してくれている声が、窓の隙間から幾度と無く聞こえてきた。
最初のコメントを投稿しよう!