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しかし、霊能力者は笑みを浮かべながら、こう言った。
『安心してください。このブレスレットを常に身につけておけば、その女は彼から自然に離れていき、あなた達は幸せになれます』
友人は霊能力者の言葉を聞いた後、力をいれていた頬の筋肉を緩めた。
そして、受け取ったブレスレットを大事そうに胸に当てていた。
『では、お次の方』
霊能力者の放った言葉で、ようやく私の番が来た事に気付いた。
でも、よくよく考えてみると、私には悩みが無かった。視てもらいたい未来もない。
私の目の前で、何やらゴニョゴョ言っている霊能力者は、一体私の何を視ようというのだろう。
そんな事を考えている私を、霊能力者はじっと見つめる。
険しい表情をして無言で見つめている。
やけに静かなスタジオ、生番組を気にしてか、ADが慌ててカンペを出す。
すかさず司会者が霊能力者に「何が視えたのですか?」と尋ねる。
霊能力者は、今日一番の低く小さい声で言った。
『何も視えません』
、と。
私は予想外の言葉に、聞き返すために口を開いた。
でも、私より先に司会者が私が話そうとしていた言葉を、霊能力者に投げかけていた。
『何も視えないとは、どういう事でしょうか?』
その問いに、霊能力者はわざとらしく見えるくらいに大げさな険しい顔をして言う。
『だから、何も視えないんです。その方の未来が視えないのです』
どよめくスタジオ内の中、私は霊能力者の言葉を理解しようとした。
未来が視えない。
未来が無い。
私……もうすぐ死ぬって事?
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