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『このブレスレットには、より強力な力が宿っています』
そう言ってきた霊能力者に対し、私は先ほどから抱いていていた小さな疑問を彼女に対してぶつけた。
『これ、ずいぶんと高価な物に見えますけど、タダでいただけるんですか?』
スタジオの空気が凍りついたように静まり返った。
どうやら私はまた場違いな発言をしてしまったようだった。悪気があったわけではなかった。ただ、思ったことをそのままにしておけないのだ。
ただ、その発言をする場所やタイミングがいつも悪いみたいだった。その辺の事が私にはわからず、いつも周囲を今のような空気にしてしまう。
番組関係者がざわつき始めた頃、霊能力者が今までとかわらず落ち着いた態度と、わざとらしい笑顔で私に話す。
『ええ、もちろん今までも多少のお布施はいただきました』
その言葉に、私の前に占ってもらった三人の動揺が伝わってきた。
━━え?お金払わないといけないの?━━
━━私、今日そんなにお金持ってきてないよ━━
小さかったけど、確かに彼女達がそう話しているのが聞こえた。
霊能力者にも聞こえたようで、彼女はみんなに語るように話を続けた。
『ただ、それは強制ではありません。それに霊視の方はいっさいお金はいただきません。あなたがたの未来をより良くする為のブレスレットですから、必要ないなら受け取らなくてもいいんですよ』
あくまで、ブレスレットを買うか買わないかは本人の意思に任せる、というような発言だったけど、不安をあおっておいて、それはないと思った。
結局、ブレスレットを買わないと不幸になるから買えって言っているのと同じだと思った。
私は、また頭に浮かんだ事を言ってしまいそうだった。
でもその前に、5番の女性が言葉を発した事で、私の発言は遮られた。
5番の彼女が言った言葉は、『私は買う』だった。
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