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俺のあっさりした返答に、男は口をあんぐりと開けていた。
心なしか、目が充血している。
今にも泣きそうな表情とは、このような顔のことだろう。
俺は構わず続けた。
「抱いてねーから安心しろよ。なにしろ、抱く気も失せるブスだったからな」
「てめぇぇええええぇえっ!」
次の瞬間、怒った男は俺に殴りかかってきた。
どこにそんな余力があったんだ、という程の勢いで。
俺はさらりとかわし、男のみぞおちに拳をのめり込ませる。
その攻撃で、男は息ができなかったのか呻き声を少し漏らしてしゃがみ込んだ。
俺はその背を踏みつける。
「くだらねぇ。たかが一人の女に、そこまでする必要があんのか?」
「…てめぇには…一生分かんね…よ。人を愛したこと…ないだろ…」
俺は見下したように、苦しそうな男を睨みつけた。
「ねぇよ。愛する気も、ねぇ」
―――愛したことねぇよ、悪いか?
お袋も姉貴も、誰も愛してない。
あいつらが俺を愛してないから。
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