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男は地面に爪を立てて、歯を食いしばる。
まだ向かってきそうな様子だが、俺は冷めた目で男を見遣り、その場を去った。
―――走れねーだろ。さっき、足に蹴りいれたからな。
ふと振り返ると、案の定、男は足を押さえてうずくまっていた。
先ほど俺に殴りかかったときに、立つことができたのは、おそらく。
―――嫉妬と、憎悪と、愛情…か。
内心馬鹿にして、俺は鼻で笑った。
―――誰かを愛して何の得がある?それは所詮、自己満足だろう。
結局あの男も、愛美という女に遊ばれていただけだ。
駅のホームに立っていると、不意に携帯が振動した。
【新着メール 一件】
何気なくメールを開くと、いつぞやの女からだった。
『リュウ~(*^^*)
今度いつ家来れるのぉ?』
世の中、そんな奴らばかり。
俺に何を期待しているんだ?
『忙しいからムリ』
それだけ返信して、片手で携帯を閉じる。
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