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楓はアレウスに言われたように、とりあえず鞄の中をチェックした。
「全部あるけど…何がどうなの? 説明して」
「ありゃ、漁をしてるんだ」
「漁?」
楓の問い掛けにアレウスは貴重品をしまいながら頷いた。
「どんな状況でも良い、囮役とスリ役に分かれ、囮役が周囲の人間の気を自分に引き付け、スリ役が集まった人間から、こっそり金目の物を頂くって寸法だ」
目の前を数人の店員が慌てた様子で先程の場所へ走って行くのが伺え、アレウスはそれを眺めながら言葉を続ける。
「海外のスリグループによく見られる基本中の基本だな、古臭い手を使いやがって…」
「へぇ…どうしてスリグループだって分かったの?」
楓の問い掛けにアレウスは笑いながら肩を竦めさせた。
「元悪ガキの勘だ。 ほら、買い物の続きをしようぜ」
たぶらかすように、そう言うとアレウスは適当に歩き始めた。
(…光引と同じ症状、あれには見覚えがある。 万が一そうなら…やはり、この周辺で禁薬が使われている事になるな…帰って色々整理しねぇと…)
楓が先程向かっていた日用雑貨の専門店に向かいながら、アレウスは真剣な表情で色々と考えを及ばせるのだった。
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