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ボールはいつもながらの遅さを保ちつつ、バッターのチェックゾーンを通過していく。
スイング軌道は変わらず、ど真ん中を通り、強打者のようなアッパースイングを繰り広げていた。ボールはミットに収まり、四番を難無く抑えた。
村口、坂本、田之上、赤森を凡打で打ち取り、スタメンである全てのバッターを打ち取ったことになる。
夕方に差し迫り、部活動終了時刻が刻一刻と近付き、生徒もちらほらと帰って行く様子がグラウンドからだとはっきり見える。その間、俺達、一年生はぎりぎりまで基礎練習と片付けを担っている。
康弘、博人、マサキ、ハル
「そういや・・・・・・サワはスタメン全員を倒したんだって? すげーなー」
「マジ?」
「嘘?」
「ホントか?」
ハルが話題を振ると、康弘、博人、マサキは信じられないという表情を作っている。そりゃ、そうだろう。一年生が一個上の先輩達を打ち取ったなんて夢のような話しだ。
「ホントだよ。三振は一個しか奪えなかったけど」
最も、奪三振なんか滅多に無い。一つでも奪えたらラッキーだと思えるくらいだ。
「ホントかよ! こりゃ、負けてらんねーな!」
ハル、博人、マサキは声を揃えて、「すぐにスタメンを奪ってやる!」と新たな目標を掲げていた。
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