支配された村

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広い大地を、一台の車が走っていた。 それは魔力で動く魔動車で、荒れた道に向いているジープ型のものだ。 その運転席には若い女性の姿。 青色のロングヘアーで目尻の高い少しキツい目付きをしている。 身長が高くスレンダーな体格で、十人に聞けば九人もしくは十人が美人と答えるであろう美しい容姿の持ち主である。 着ているものは無骨な革製の軽鎧で、運転席の脇には長さ一メートルを越える直剣が携えられていた。 その隣には、運転席の女性と年の変わらない女性。 白髪のショートヘアーで、目尻の低い柔和な顔つき。 同じく高い身長だが、隣の女性に対してグラマーな体型で、こちらも大変な美人だ。 着ているものは白いローブ、その手にはやけに分厚い魔法書が握られている。 「オルレイン、次の国にはまだつかないのですか?」 助手席に座った白髪の女性が、運転席の女性へ問いかける。 オルレインと呼ばれた女性は視線を正面に残したままその問いに答えた。 「ジークリンデ、その質問は一体何回目だ? 次の国にいつつくかなんて分からないと言ってるだろう。 舗装された道がないあたり、近くに国はないかもしれないな」 「それは困りましたね。 今日で二週間……濡らした布で体を拭くだけなのは、そろそろ辛いのです」 「すまないな、出来るだけお前に苦労はかけたくないのだが……。 しかし実際問題、今日か明日くらいにはどこか見つけないと、そろそろ食料が尽きてしまうな」 後部座席に積まれた荷物をバックミラーで確認しながら、オルレインは険しい顔をして言う。 食料が尽きてしまうのは流石にまずい。 しかし、この辺りには本当になにも無さそうだ。 最悪野性動物を狩猟して食べることも検討せねばなるまい。 ジークリンデが獣肉を苦手としているので、出来ればやりたくないのだが。 そんな事を考えるオルレインの視界に何かが映った。 「?」 遠目からでは判断し辛かったが、それはどうやらトラック型の魔動車の様だ。 車を止めて慌てているところを見ると、どうやら魔力切れでも起こしているのだろう。
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