差別する国

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自分が捕まってしまっては、アリスを守れなくなる。 なので必然的に、捕まらない内にこの国を出る、という結論に至った。 ダイゴを捕まえに来た奴等を殺す事も出来るが、その人達には罪がない。 先程殺した奴等と同列ではないのだ。 できればその選択は取りたくない。 そして幸いにも、食料や飲料水、馬の餌などの消費物は昨日の時点で買い揃え、馬車に積み込んであるので、そこに時間を割く必要はなくて済む。 「……アリス」 「?」 「すまないが、今からこの国を出る。 もう少しゆっくりできる予定だったんだが……」 人を殺した事を黙っている、その後ろめたさから少し目を伏せて言うダイゴに、アリスは明るい声で言葉を返した。 「はい、ダイゴおじさん。 この国、美味しいものがいっぱい食べれて楽しかった!」 そう言った後、ダイゴの足元まで寄ってきて、アリスは満面の笑みを見せる。 ダイゴはアリスの頭を優しく撫でると、二人で宿の入り口へと向かった。 急ぎの用事が出来たという事で早々に宿を出て、預けていた荷物と馬車を受け取る。 帰り道で誰かに止められる事もなく、それから数十分後、何事もなくその国を出ることが出来た。 「……もう、大丈夫か」 国を出てから数十分。 城壁に囲まれた国の姿が見えなくなったところで、ようやくダイゴは一息ついた。 ここまで離れていれば、流石にもう心配はないだろう。 しかし、困ったこともある。 次に行く国がどこにあるか、その情報を聞いてくることが出来なかった。 どこへ行けば国があるか分からぬまま移動し続けるのは危険だ。 かといって今から戻るわけにもいかない。 同じ旅人と会った時に、情報を聞くくらいしかないかもしれない。 馬車の中に乗っているアリスを見ると、どうやら寝ているようで、壁にもたれかかり毛布を被っていた。 「……まぁいいか。 食料はある、旅人に会うより早く国が見つかるかもしれないしな」 とりあえずはそう考える事にする。 気に病んでアリスを心配させるのは避けたい。 そしてふと考える。 アリスの住める国が見つかったら、自分はどうすればいいだろう? ふと浮かんだその考えはすぐに消えた。 「それを考えるのは、全て終わってからでいいか……」 小さな呟き。 まるでそれに返事をするかのごとく、馬車を引く馬が一度だけ大きく嘶(いなな)いた。
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