18人が本棚に入れています
本棚に追加
その魔動車の近くまで行き、オルレインが慌てている男性へと話しかける。
「どうかしましたか?」
「あ? ああ、ジープって事は旅人さんか。 それがな魔力切れを起こしちまって……予備の魔力タンクもねぇし、本当に困った……」
「ああ、やはりか……。 よし、ジークリンデ」
「はいはい、少々お待ちくださいな」
オルレインに促され、ジークリンデは車から降りると、トラックの方へ。
「お、おいおい嬢ちゃん。 一体何する気だ?」
慌てた様子でそれを制止しようとした男性を他所に、ジークリンデはボンネットを開け、中から人の握りこぶし程度の青く光る石を取り出した。 魔動車の原動力となる魔力を貯蓄できる魔石である。
ジークリンデがそれを両手で握りしめると、数秒後光る石の色が赤く変色した。 石をボンネットにしまうと、車が小刻みに震え始める。
「お……おお! もしかしてあんた、魔法士かい? 助かった、本当に助かったよ!」
「いいえ、わたくしは魔法士ではなく召喚士です」
「あ? そう、なのか? まぁよく分からんがありがとな」
「ああ、待ってくれ。 少し聞きたいことがあるのだが」
車に乗り込もうとした男性をオルレインが呼び止める。 流石に男性も助けてもらった側であるゆえ、特に不快そうな様子は見せない。
「ん? なんだ? 分かる事なら答えるぞ」
「この辺りに国はないか? 物資を補給できるなら何らかの施設でもいい」
「……そう、だな。 まぁ魔法士さんなら大丈夫か」
「?」
意味深な前置きの後、男性はここから西へ一日ほど車を走らせた場所に小さな村があることを二人に伝え、車で走り去っていった。
その様子がどこか変で、オルレインは少し気になったがすぐにその考えを頭の隅においやる。 とりあえずは、物資の補給が一番優先すべき事だ。
「村、か。 まぁ食料の買い込みさえできれば問題はないだろう。 急ごうか」
「ええ、わたくしはお風呂にさえ入ることが出来ればそれで」
西へと車を走らせること一日。 男性の言う通り、小さな村が見つかった。 どうやら旅人が訪れるのは珍しいらしく、割りと手厚く二人は迎えられ、少し驚く事となる。
男性とのやり取りで、旅人を嫌う風習でもあるのかと予想していたのである。 しかし、食事は村の人が用意してくれ、宿の手配までしてくれたのだ。 その予想は完全に外れていたと言っていい。
最初のコメントを投稿しよう!