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オルレインの呟きから十分、そして二十分が過ぎた頃、ようやく扉の奥にあった気配が動いた。
もはや隠そうともしない。 ドタドタと慌ただしい音をたてて、勢いよく扉を開けてなだれ込もうとしてくる。 しかし。
「それ以上踏み込もうとするならば、手加減はせんぞ」
ジークリンデの静かな怒声。 それに動きを止めざるを得なかった。 しかし立ち去る様子もない。
「……十数える間に立ち去れ。 さもなくばこちらから出向く。 ……十、九」
それでもまだ立ち去る気配はない。 オルレインは心の中で大きく嘆息して、カウントダウンを続けた。
「……二、一、ゼロ。 覚悟は、いいな?」
カウントダウンを終えたオルレインが目の前の扉を開け放った瞬間、数人の男がオルレインに襲いかかった。
(武器は無し、全部で四人、か。 ならば……!)
オルレインは男達の攻撃を紙一重で避けると、剣を柄から抜かず、男の一人の喉へと突き出す。
「ぐぇっ!」
苦悶の声と共に喉を押さえて崩れ落ちる男の脚を払い、その体が宙に浮いた瞬間、男の顎の先端を柄で叩きつけた。
その勢いで床に叩きつけられた男はそのまま動かなくなる。 死んだわけではない、脳震盪によるものだ。
わずか二回の攻撃で人が倒れるのを見れば、その近くにいる人間は確実に気後れする。 実際、その横に居た三人は戦意を喪失した。
しかし、三対一では不利な事は間違いない。 相手が数の有利に気付く前に確実に数を減らす。 オルレインは攻撃の手を休めない。
オルレインは鞘に納めたままの剣を、強引に横へと薙いだ。 風を裂く剛剣。 それを受けた男性はひとたまりもなく壁へ叩きつけられる。
「ぐぁっ、骨がッ!」
「黙っていろ、ジークリンデが起きてしまう」
続いて頭部へ一撃、これは骨が折れない程度に。
「ッ……」
早くも二人目が沈黙。 残りの二人はもう完全に戦意を失っている……が、話を聞くだけならば一人残しておけばよい。
振り返り様の一撃で頭部を強打され、もう一人その場に崩れ落ちる。 これが扉を開けてからわずか十秒足らずの出来事である。
「さて……」
「ひっ!」
「教えてもらおうか。 何故私達を襲おうとした? 答えねば一本ずつ骨をへし折ってゆくぞ」
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