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その音に引っ張られたように姉が立ち止まった。
わたしは勢い余って姉の胸に飛び込み、包むように受け止められて止まった。
「……かあ、さん……!」
頭の上で震える声に吊られて姉の顔を見上げると、真っ青に血の気の引いた顔があった。
わたしも姉の視線を追って、後ろを肩越しに振り返って見た。
広場を囲む民家は炎を噴き上げている。人の姿は、ない。
あるのは人だったものだけ。
息絶えた村人と、さっきまで生きていた事を物語る血だまりが広がっている。
まるで血の雨が降ったかのように無造作に広がる血だまりの一つの中に、わたし達の母さんも倒れていた。
「まだ息があるな、仕留め損ねたか」
母さんは土に倒れ伏し、胸の穴から血を流していた。それでも、懸命に腕で体を起こしている。血がとめどなく流れ出て血だまりが広がっていく。
「逃げて……早くッ!!」
母さんが、金切り声に近い叫びをあげた。
思考が白熱する。視界が焼けていく。頭が熱い。何が起きているのか、理解しようとしても、思考が泥のようにぬかるんでうまく回らない。
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