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井上穂乃。
彼女はごくごく普通の女の子。
自分の夢を追って、専門科のある宮城県 のこの公立高校に入学したばかりの1年生。
入学早々の放課後。
私たちは学校の駐輪場で、約2週間後に控えた定期戦の応援練習をさせられていた。
日も暮れて校舎の壁も茜色に染まり始めた頃、柔らかい春の風に交ざる身に突き刺さる様な冷たい風が吹いた。
薄暗い駐輪場に響き渡る応援団の怒鳴り声と、男子の先輩の容赦ない野次。
コンクリートで出来た地面に素足でいる私達。
恐怖と寒さで震える中での地獄のような練習は、放課後にほぼ毎日行われた。
手には竹刀を持ち、古びた黒い団服で身を包み、足元辺りまで伸びる長い鉢巻を巻いて物凄い剣幕で睨み付けてくる。
それが、新入生が恐れている“応援団”の姿だった。
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