邂逅

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―――――――――――――――――――――――・・・ 何時間そうしていたのか、伸ばしていた手をだらりと下げて息を付くと、ざわめく周囲に馳那はぼんやりしていた意識を浮上させた。 「あら、珍しく上機嫌なのね…?」 目の前に仕上がった大きな作品を見上げていると、背中にやんわりした声が聞こえ、馳那は隣に向けて首を傾ける。 「母さん」 いつ来たのか、隣には着物を着てスラリと立つ実の母親が立っていて、完成されたばかりの作品を見上げながら、ニヤリと笑って、馳那に視線を移す。 「皆が見に来いと騒ぐのだもの。 ちょうど近くによったから来てみたの」 見透かしたように笑う母親に、気まずくて視線を逸らすと、会場の入り口で二人の子供を連れて立っている香椎が見えて、まさかと思い忌々しげに馳那は母親をねめつけた。 「……まさか、知ってたの?」 問えば、更にニヤニヤ表情を緩めた母親が馳那の視線を追って入口の方へ視線をやり、恍けた様に肩をすくめる。 「どれのこと?」 その言葉に全てが見透かされていた事を知り、馳那はがくり項垂れて肩を落とした。 「だよね……忘れてた………母さんと、縹紀のおじさんは幼馴染だ…」 「母に隠し事出来るなんて当分早いと思いなさい」 記憶を手繰り寄せて思い出した繋がりに、更に力が抜けて呟けば、ふふんと笑った母親にペシペシと肩を叩かれ、馳那は息を吐きだしてから姿勢を正す。 もういちど見上げた自分の作品は、恥ずかしいほどに心が現れていて、見上げて瞬間頬が熱くなって、誤魔化す様に視線を逸らした。
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