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部屋に戻って、二人して盛大に息を吐き出して、そしてそれがおかしくて、顔を見合わせて笑い会う。
その空気に、それまでだんまりしてただ香椎の側にくっついてきていた二人の子供が、クイっと二人の着物の袖を引っ張った。
「…………なかなおり、したの?」
「………けんか、おわった?」
見上げてくる四つのまっすぐな黒目に射ぬかれるように見上げられて、馳那は視線を会わせるようにしゃがみこむ。
「…終わったよ。ちゃんと仲直りした。
ごめんね、君の母さんをいじめて」
視線を合わせて告げれば、少年はブンブン首をふってきゅうっと馳那にしがみつく。
「…あー、にいさまずるい!」
それを見た少女が、真似して馳那にしがみつき、身動きが取れなくなったことに戸惑って馳那は香椎を見上げた。
「………知ってるんです。
馳那が、……その………………」
「…………え?………何で?」
「………しゃしんでみたよ?」
「………かあさまが、とおさまのしゃしんみせてくれたもん」
自慢げに言う二人にさらに抱きつかれて、馳那はますます自分の不甲斐なさに心は沈んで、盛大に項垂れた。
「…………………知らなかったの僕だけ?」
「そう、とおさまなかまはずれなのー!」
「ひみつだったのー!」
「「ねー」」
打ちひしがれる馳那をよそに、子供達は楽しそうに声を揃えてはしゃいで、その声を聞いてるだけで、どうでもよくなるが、やはり自分だけが置いてきぼりを食らっているようで面白くない。
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