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「…知らない間にこんなに大きくなってるなんてずるいな……」
しがみつく子供達に手を伸ばして抱き締めれば、嬉しそうに笑う声に馳那はさらに抱き締める腕に力を込めた。
「…………………ごめんなさい」
きゃっきゃとはしゃぐ子供達の笑い声の間柄聞こえるのは香椎の申し訳無さそうなか細い声。
見れば、じゃれる自分達を泣きそうな顔で見てる香椎がいて、馳那は二人の頭を撫でて身体から離れさせ、香椎と同じように泣きそうに微笑んで、香椎へ向けて腕を伸ばした。
「ごめんなさい……勝手な事して、ごめんなさい…」
泣きそうなのに、けして涙を流さずただか細い声で謝罪を口にする香椎の声が余りにも切なくて、馳那の心は締め付けられるように痛む。
あの時の彼女はまだ18だった。
大人びてはいても、まだまだ子供で、こうして今はしっかり立っているかもしれないが、どれだけの不安を胸に仕舞い込んでいた事だろう。
あの時の香椎を馳那は思い出す。
ただただ自分に必死に手を差し伸べてくれた彼女を。
初めに彼女が体調を崩したのはいつだったかを思い出す。
そうして、自分が彼女に対して常に気付かないフリをしていた事を情けなく思う。
何も知らずに、ただ避け続けたあの頃の自分を厭わしく感じ、馳那は垂れ下った香椎の手を引き寄せて、体勢を崩して倒れこんできた彼女を懐のなかに受け止めてしっかりと抱きしめた。
彼女が一番つらい時に彼女を突き放した。
そうして自分は何も知らずにこうしてのうのうと生きて来た。
目の前で茫然とそれを眺めている二人の子供の歳がその年月を物語っている。
なのに、子供達は自分を罵る事無く、逆に此方が戸惑う程に容易く受け入れてくれている。
それに彼女がどうやって二人を育てて来たかと言う事を思い知る。
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