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「独りにして……ごめん」
呟いた声に、香椎の肩が小さく震え、しがみ付かれた彼女の手にただただ降り積もった愛しさだけが溢れてくる。
あぁ、好きだな…。
そう思って、更に抱きしめて、左手を絡め取って、指輪のはまったその指にそっと唇を寄せた。
「馳那」
「うん…」
「やっと、信じてくれますか?」
「……うん」
「ほんとに…ほんとに、好きなんです………」
「うん…」
ただそれだけの想いの為に、大人になる為の大事な時期を費やしてくれた彼女に自分は何をして償えばいのだろう。
そう思うと、腕の中の彼女がより一層愛おしくなり、馳那の内でずっと仕舞い込んでいた彼女への想いの蓋が壊れて消える。
「………信じるよ…。
ちゃんと信じる。
……ほんとはどうしようもないくらいに君を好きだ……」
言いたくて、言えずに鍵を掛けてしまいこんだ言葉は、馳那の口から容易く声になり、香椎の耳を震わせる。
伏せた黒耀から雫が一筋頬を流れ落ち、長い睫毛を濡らした。
その雫を着物の袖で拭いてやりながら、馳那は愛おしげに香椎の頬にキスをする。
その様子を子供達がぽかんと眺めていた。
その事に気付いて、馳那は少し照れながら、クスリと笑って手招きする。
それに子供達は表情をぱっと明るくさせて、再び馳那の腕の中に収まった。
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