267人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんか、緊張します………」
彼女がそう呟いたのは荘厳な佇まいをした家の前。
呼び鈴を押そうと馳那が手を伸ばした時だった。
左手の指はしっかり彼女の指と絡ませてあり、その指が若干震えていることに微笑んで馳那は呼び鈴に翳していた指を下ろして、彼女の震える手を両手で包み込む。
「……君でも緊張するんだ?」
からかうように言えば、彼女は頬を膨らませて見上げてくる。
5年前には知らなかった彼女のそんな一面を、再会した今、どんどんさらけ出してくれる彼女が愛しくて、わざとからかうようなことをしてしまう。
「ごめんね、
でも大丈夫だよ」
馳那がむくれる彼女を宥めるように申し訳なさそうに笑えば、彼女は頬を赤らめて、悔しそうに視線を伏せた。
最初のコメントを投稿しよう!