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彼女の手を包み込んでいた手を、逆に彼女の手が両手で包み込んで、伏せていた視線が再び馳那に向けられる。
真っ直ぐな黒耀。
「…………何の報せもなく家出した家に帰るんです…………しかも……」
「子供が居て、その子供の父親は俺だ」
口ごもる彼女の言葉を繋げて言えば、彼女の綺麗な黒耀が揺れて、握る手に力が籠った。
「大丈夫。
俺の方が緊張してる」
言って、彼女の手を自分の左胸に押し付ける。
そこから伝わる鼓動の早さに目を見開かせた彼女に苦笑して、馳那は更に彼女の両手を持ち上げて、唇をおしつけた。
「…ふふふ」
やっと笑みがこぼれた彼女に安堵して笑い合う。
「…………馳那?なにしてんの?」
再び呼び鈴を押そうとしたところに、背後から自分と良く似た声がかかり、彼女と二人、馳那は肩を大きく震わせた。
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