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通された応接間で、懐かしい庭を眺めながら馳那は隣に座る香椎をチラリ伺う。
やはり緊張しているのか、その表情は固くて、小さな物音にビクついては、部屋の入り口を落ち着きなく伺っている。
それに苦笑して、馳那は固く握りしめた彼女の手をそっと取って、指を絡ませて繋ぎ会わせた。
恐る恐る向けられる固い表情に、ヘラりと笑ってやれば、笑い返してくれるも、固いままのその笑顔にどうしたもんかと思考を巡らせる。
一度解けた緊張は、突然現れた真茅によって再び呼び覚まされたようで、彼女は家に入ってきてからずっとこの調子で俯いている。
「……香椎」
呼べば頼りなげに微笑むその表情が可哀想で、そんな表情をさせてる原因が自分にあることにとても申し訳なくなる。
「もう、そんな顔しないで。大丈夫。
いざとなれば君の居場所ぐらい俺が作ってあげるから」
「私の居場所はいざとならなくても馳那の所ですもの」
「…………あ、…そう」
ふざけて言えば、さらりと返ってきた彼女の返答に逆に、馳那は頬が熱くなり、照れ隠しに頬杖をついて視線をそらした。
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