267人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちょっと。
イチャついてるところ悪いんだけど……」
そうこうしている間に、いつの間にか戻ってきたのか、じっとりした目で真茅が部屋の中を見ていて、馳那は視線が合うとさりげなく繋いだ手を背に隠す。
「ははっ。何?真茅、羨ましい?」
シレっと微笑んで言う馳那に、真茅は息を吐きだす。
「義母さん、もうすぐ来るから…」
「あぁ、ありがとう」
出て行こうとする真茅に微笑んで返せば、真茅は拗ねたような表情のままチラリと馳那に視線を戻した。
「――――後で、俺にもちゃんと経緯を説明してよ?」
「………もちろん」
不機嫌そうな真茅の声にクスリ笑って返せば、やっと彼はいつものように微笑んで、部屋を出て行く。
「あら、真茅。戻るの?」
「うん。俺も、義母さんも居なかったら、あっち大変でしょ?」
それに入れ替わる様に入ってきた義母の声に馳那の背に隠される様に座っている香椎の身体がビクリ跳ねあがった。
繋いでいた手から、その振動が伝わり、馳那は繋ぐ手に力を込める。
義母は去っていく真茅を見送った後、やがて何食わぬ顔で部屋に入ってきて目の前のソファーに腰掛けてまっすぐに目の前に座る二人を見た。
「お父さんの所に居るって事は聞いてたから心配はしてなかったのだけれどねぇ」
やんわり口を開いた義母に、更にビクリと香椎の身体が跳ねて、馳那は繋いでいた手を離して俯く香椎の頭をそっと撫でる。
最初のコメントを投稿しよう!