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「―――でかしたわ!!」
「はぁ?」
固くつむった目の前で、空いた片方の手が取られ、打って変わって母親の嬉々とした声が耳に入る。
逆に、間の抜けたような馳那の声が隣から聞こえた。
それにそろりと瞼を持ち上げれば、目の前には自分の片手を両手で握り締め、まんべんに笑う母親が見え、香椎は間の抜けたような表情で、その母親を見返す。
「お母様?」
戸惑った香椎の声に母親は再びソファーに腰をおろしてニヤリ笑って目の前で呆ける二人を眺めた。
「なに?良い歳こいて私が怒るとでも思ったの?」
「………や、それでこそ義母さんだと思った…」
「何よ、相変わらず失礼ね」
「ごめんね義母さん…俺のせいで、香椎が家出しちゃったんだ…」
「それは笑いごとじゃないわぁ。
可愛い娘を元旦那に取られた上に、義息子に取られちゃうなんて災難だわ」
馳那が苦笑して言えば、義母は拗ねたように頬を膨らませて、香椎とよく似た表情で馳那を睨みつける。
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