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「あら、自業自得でしょ?」
容赦のない物言いの義母に苦笑しながら、繋いだ手だけは離されない様に馳那は香椎の手を強く握りしめる。
「ちょっと親の前でイチャつくのやめてくれる?」
「何?義母さん、ひがまないでよ」
「ひがんでないわよ。
……そんなに仲がいいなら何で隠してたのよ…」
しっかり繋がっている手を眺めながら、不思議そうに聞いた母親の声に、香椎も反応し、反らした視線が興味ありげに馳那を見つめた。
「…え゛…?
…………なんで香椎まで…」
4つの目に詰め寄られた馳那は、なんとかはぐらかそうかと二人から視線を逸らし、中庭に向けて顔を向けたが、背に詰め寄る視線の痛さに溜息を吐きだして視線だけで香椎を見る。
「……だって、私、あの頃は馳那に嫌われてると思ってましたし……」
「あぁ、だから貴方達真茅に比べてあんなに余所余所しかったの?」
「…………っっ」
更に追い打ちを掛けてくる二人に、馳那はやがて根負けして、動揺を誤魔化す様に脱力して、ソファーのアームに凭れかかった。
「………一目ぼれだったんだよ……
なのに、次に会った時には義妹だなんて………突き放すしかないじゃないか…
………しかも生徒だし…」
「何言ってんのよ、しっかり手だけは出しといて」
「……………返答のしようもない…」
目を泳がせながら応えた馳那の言葉を義母が一刀両断する。
「あの…でも…それは私のわがままもあって」
「いいよ、香椎…。拒絶しようとしたら出来たのを、あわよくばでしなかったの俺だから……俺が悪い…」
それに更にソファーに身を沈ませた馳那を、見かねた香椎が口を挟むが、それさえも否定して、馳那は完全に顔をソファーに埋めた。
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