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「あー、もううっとおしいわね…
仲が良いのは分かったわ……で?」
目の前で罪の取り合いをし始めた二人を制し、義母は既にどうでも良くなったのか、自分で投げかけた問いを無かった事にして、視線を二人から反らした。
「香椎と結婚する」
「そんなこと当たり前じゃない……
私が聞きたいのは、ま・ご!!
可愛い孫は何処?」
馳那の意を決した告白はサラリと流され、詰め寄ってきた義母に、馳那は頭を抱え、香椎は笑みをひきつらせ動きを止める。
「……今日は連れてきてないよ…」
「どうして?!」
「ちゃんと話しようと思ったからだよ!!」
もはや漫才を始めた自分の母親と元義兄を眺めながら、香椎はやっと肩の力が抜けたのか、クスクスと笑みを漏らした。
昔は知らなかった馳那の心の奥底の真実を知ることができ、嬉しさで心が温まる。
はっきりと『結婚する』と告げてくれた事に思わず繋いだ手に力が入り、チラリと向けられた馳那の視線に、香椎はニッコリと微笑み返した。
「ごめんなさい母様。子供は今日は稚早先生が見ててくれてるんです」
答えれば、香椎の言葉に母親は「まぁ、稚早ちゃんたら抜け駆け!!」と舌打ちをする。
すかさず携帯を取り出して何処かに電話をかけだした母親を馳那はげんなりと、香椎は苦笑して見た後、再び顔を見渡して呆れた様に笑い合った。
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