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話の内容からして自分の母親に電話を掛けているだろう事が聞きとれ、馳那はいつまでも若い二人の母親に内心溜息をつく。
最近知った事だが、ややこしい事に、自分の本当の両親と香椎の本当の両親が古くからの友人だ。
その所為か、性格が似すぎている母親同士は旦那の元妻と現妻とは思えない位に仲が良い。
それもそのはずで、馳那の父親に義母を紹介したのは母親であると知った時、自分達の世界の狭さに呆れてしまったのを馳那は覚えている。
そうこうしているうちに電話を切った義母は、素早く立ち上がり、部屋を出て行こうと二人の前から立ち去ろうとするので、慌てて馳那は止めに入った。
「ちょっと、ちょっと待って!!
何処行くの?!」
「稚早ちゃんのとこよ!!」
「はぁ?!」
「私も混ぜてもらうゎ!!」
そういって再び部屋を出て行こうとする母親を追い掛けて、香椎と二人、馳那もソファーから慌てて立ち上がって廊下を進む母親を追い掛ける。
「ちょっと義母さん!!仕事は?!」
「旦那さまと真茅が居れば問題ない!!亜佐姫ちゃんもいるから!!」
そう言って、途中自分の部屋に入って、バッグと羽織りを掴み取った母親は周りに見向きもせずに玄関で草履をつっかけた。
「で、結婚認めてくれるの?」
既に諦めた馳那と香椎はは義母に続くように靴を履いて、玄関を出て行く母親を追い掛ける。
「結婚?良い歳なんだから勝手になさい。
もう二人とも籍はこの家に無いのだから、おばあ様もおじい様も煩くは言わないと思うけど……耳に入ると煩いのから、さっさと済ませちゃいなさい」
歩きながらサバサバいう義母の言葉は流石あの口うるさい祖父母と渡り合っているだけあって、強気で、頼もしい。
「ひ孫の顔でも見せに来たら陥落するでしょう。
じゃ、私、こっちの道だから」
何でもない事の様に言って、曲がり道で道を違えて、さっさと背を向ける。
それを香椎と二人で見送りながら、馳那はやれやれと息を吐くと、香椎の手を繋ぎ直して、「…行こうか」と微笑んだ。
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