267人が本棚に入れています
本棚に追加
手を繋いで歩きだす。
チラリ振り返った道に既に義母の姿は無く、互いにパワフルな母親の事を思い馳那と香椎はクスリと微笑んだ。
繋いだ手を離す事無く、あの日別れを告げた道を歩く。
「結婚、してくれるんですか?」
「してくれないの?」
窺う様にいう香椎に苦笑する。
逆に聞き返せば勢いよく首を横にフラれて、更に馳那の頬が緩んだ。
「ん?」
だから、ついついからかいたくなって、馳那は分からないフリをして首を小さく傾ける。
「…………っっ…したい……です」
頬を染めて、拗ねたように途切れ途切れ呟いた香椎に、思わず噴き出せば、彼女は顔を更に赤く染めて泣きそうに瞳を潤ませた。
「意地悪……」
年相応に表情をころころ変える彼女が愛おしくて、馳那は満足げに微笑む。
「よし。
じゃぁ、今から行こう」
「え?!今から??…何処に?!」
「決まってんでしょ。市役所!!」
戸惑う香椎の手を構わず引きながら馳那は足取り軽く歩きだす。
「えぇ?い、今から?!ですか?!」
「思い立ったが吉日って言うでしょ?」
「…………馳那も充分稚早先生似ですよね…」
呟かれた声にニンマリ微笑んで、ぐいぐい進んで行く馳那に香椎は諦めた様に力を抜いて引っ張られるままに馳那についていく。
しっかりつながれた手を見て、ほっこり暖かくなる胸に幸せを感じる。
チラリ、あの時別れを告げられた道に視線を向けて、香椎は振り切るように足を踏み出した。
最初のコメントを投稿しよう!