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ハリスはカーテンに手をかけると少しの逡巡の後、勢いよくそれを引く。彼の目に飛び込んできたのは暗闇だった。しかし、それは夜の闇ではない。闇という表現がしっくりくる、美しい女性がそこにいたのだ。その女性はブロンドの髪、らんらんと輝く金色の瞳、透けるように白い肌、目にも鮮やかな深紅の唇、それほど華やかな色合いを持ちながら、ハリスにはそこに闇がたたずんでいるように思われた。そもそも、そこは二階である。窓の外に人がいるわけはないのだが、そのような疑問はその闇に飲み込まれ、ハリスの頭の中から消えていた。
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