華やかな闇

5/22
前へ
/498ページ
次へ
 ハリスはカーテンに手をかけると少しの逡巡の後、勢いよくそれを引く。彼の目に飛び込んできたのは暗闇だった。しかし、それは夜の闇ではない。闇という表現がしっくりくる、美しい女性がそこにいたのだ。その女性はブロンドの髪、らんらんと輝く金色の瞳、透けるように白い肌、目にも鮮やかな深紅の唇、それほど華やかな色合いを持ちながら、ハリスにはそこに闇がたたずんでいるように思われた。そもそも、そこは二階である。窓の外に人がいるわけはないのだが、そのような疑問はその闇に飲み込まれ、ハリスの頭の中から消えていた。
/498ページ

最初のコメントを投稿しよう!

180人が本棚に入れています
本棚に追加