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風邪を引いて学校を休んだ火曜日。午前11時を少し回った頃。
二階建てのまだまだローンが残っているであろう我が家のリビングで私は大分眠っていたらしい。
小学四年生になっているにも関わらず、心配性の母さんと父さんが、布団をリビングに持ってきてくれた。
その後、すぐに仕事に行ってしまったけど。
額に手を当ててみる。
「うん。熱は下がってきてる…かな?」
ケホケホ言いながら枕元に置いてあった本を手に取る。
本はいい。何処にいても、どんなときでも、逃避を許し、旅をさせてくれる。
友達がいない私にはちょうどいい逃げなのだ。
私は人を信用しないし、頼らない。
それは、少しばかりの淋しさと引き換えに、絶対的な心の安息に繋がるから。
友達などいなければ友達からの評価に怯える必要もない。
まぁ、そんなこと気にせず本を読もう。
この本の犯人の目星はもうついてる。多分、探偵自身だろう。だけど、本のタイトルと噛み合わない。そこが謎だ。それを知るためにも続きを読もう。
と、思った刹那、家の前で汽笛のような音がした。
ポーッと一度。だけどそれは有り得ない。ここは海なし県だし、さらに交通手段はバスしかない。
好奇心が疼く。まるで、SF小説の主人公のように。現実では、99%何もないだろうけど。それでも、残りの1%に懸けたい。それが例えマイナスの考えたとしても。
リビングから、玄関まで歩く。心なしか体の調子はすこぶるよく、軽く下手なスキップもした。
本を小脇に挟んで、魚眼レンズから外を覗く。
そこにはブラウンの髪に瞳の中学生くらいの男の子と空中に浮かぶ「列車」があった。
ピンポーン。我が家のチャイムがなった。私の人生は始まったかも知れない。
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