君よ、こっちを見てくれるか

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そこにいたのは私が探していた中在家長次その人だった。 「おー長次!!探したぞ!本棚の整理はもう終わったのか?」 私の問いに長次はこくりとうなずく。 そして長次は今度は恵々子に視線を向けた。 「恵々子が手伝ってくれたから…早く終わった……」 「なら良かったです」 恵々子は読書をしていた訳ではなかったのか。 手伝いとは感心なことだ。 「…ありがとう……」 長次はそう言うと、恵々子に近づき、そして頭に手を優しくのせ、撫でた。 恵々子はちょっと驚いた顔をしたが、嫌そうではなかった。 むしろ… 恵々子…嬉しそう、だな そう見えた。 恵々子はちょっと照れたように顔を赤らめていた。 私といるときとは、違う態度。 ああ…そうか、そうなんだな。 この子は、長次が好きなのか。 …っ 「長次!!私は先に長屋に戻るからな!!」 そう言って私はダッシュで図書室から逃げた。 あの二人を見たくなかった。 見ていると、胸が張り裂けそうだったから。 「…っあぁーっ!!」 くそっ胸が痛い! なんでこんなに…こんなに… そして私はもう一つの事実に気がついた。 ああ、私は恵々子が好きなんだな。 きっと、一目惚れってやつだろう。 「…恵々子…好きだ。」 もうこの想いは止められない。 たとえ長次がいようとも。 今でもはっきり思い出せる、あの青くて丸い目と、ふわふわの髪、そして笑顔。 あきらめんぞ…あきらめてたまるか! いつか、君を振り向かせるからな!
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