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「…私は、ある人が大好きなのだ。たまらなく愛しい。触れていたい。もっと仲良くなりたい。でも…」
「でも?」
「その人が見てるのは…私ではない。」
「…そうなのですか…」
恵々子は表情を変えずに聞いている。
「私は…私は…好きな人しか見ていない!なのに…なのに…なぜ…私を見てくれないのだ…苦しい!辛い!私を見てくれ!」
そう、長次でなくて、私を見てほしい。
恵々子は黙って聞いている。
私も言い切ったので、黙る。
数秒間沈黙が続いた。
しばらくすると、恵々子は私の頭に手をのばしてきた。
そして、私の頭を撫でた。
優しい撫で方に私はふっと力が抜けた。
恵々子…
「辛かったのですね…小平太先輩。よく頑張ってたですね。私全然知らなくて…ごめんなさい。」
「いや、いい…私も急に取り乱してすまんかったな」
「大丈夫ですよ」
恵々子はにこりと笑う。
やっぱりこいつは優しい。
長次が好きなんだから、こんなこと言われても困るだけなのに、ちゃんと聞いてくれた。
「すまん…迷惑だろうにな」
すると、恵々子はきっとこっちを見返し、強い口調で言った。
「迷惑なんかじゃありません!私なんかで良かったらいくらでも話を聞きます!」
「…恵々子」
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