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「………」
ハクアは呆気に取られたのか、ポカンとしていた。
…俺、変な事言ったか?
こればかりは客観的に自分の行動を振り返る俺でも、呆気に取られた理由が分からない。
「……忘れ物取りに行ってきますね…」
ハクアはスタスタと俺の横を通り過ぎ、階段を降りていった。
えっ……まさかのスルー!?
何だよ~、素直に気持ち伝えたつもりだったのに…
「嫌われた…のか?」
気まずい感じでハクアと同じ教室で過ごすのか……そう思った矢先、携帯から音楽が流れた。
着信音にしている音楽…つまりは、誰かから電話が来たのか。
着信相手の名前を見る気力が出ない。
ため息を吐きながら渋々、通話ボタンを押して耳に当てる。
「はあっ…もしもし」
「こ、これからよろしくお願いします!以上です!」
それだけ言われ、向こうから切られてしまった。
声はうわずっていたが、今の声は……着信履歴を開いてみると、そこにあった名前は間違いなく、先程の彼女からだった。
「……何かよく分からないが…良かった~、嫌われてなくて…」
涙出そうだよ、感動モノだよ、これは。
少し上機嫌で部屋へと帰る俺には知り得ない事だが、ハクアはわずかに頬を赤くしながら校舎に向かったのだった。
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