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「女子、三階だったな。
悪いが、三階の階段の途中までしか運んでやれない」
男子が二階なのに女子のいる三階へ行く……不審者扱いされる可能性が高い。
入学初日から、変な目で見られるのはキツい。
「そもそも頼んでません」
隣を歩く女子生徒は、少し不満そうに頬を膨らませていた。
「いや、あのまま放っとくのも俺としては出来ないしなぁ…」
「………はあっ」
深いため息を吐かれた。
呆れられたか…まあ、気にしない方向で。
あっという間に三階に向かう途中の階段でダンボールを降ろした。
「あとは頑張れよ」
階段を降り始め、背中を向けたまま手を振った。
「…あのっ!」
「ん?」
女子生徒の声に顔だけ振り向かせる。
「…ありがとう…ございました」
深々とお辞儀してくれた。
ちょっと素っ気ないが、別に気にする事はない。
「どういたしまして」
それだけ言って、階段を再び降りていった。
二階まで降り、自分の部屋へ向かう途中…
「名前…聞いとけば良かったかなあ…」
せっかくの機会だったのだから、名前を知っといても損はなかっただろうな。
また、会う事があればその時に聞いてみるとしよう、うん。
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